F産業廃棄物処理会社事件会社に対して支払いが命じられた残業代の額:75万2929円廃棄物収集運搬管理会社を解雇された元従業員の方が、在職中の深夜労働を含む残業代を会社に請求した事案です。裁判では、時間外労働の割増賃金及び深夜労働の割増賃金が既払いの基本給・能力給に含まれるかどうかが争われました。 結論として、裁判所は、深夜労働割増賃金は基本給に含まれていると認定して元従業員の請求を退けましたが、時間外労働割増賃金については能力給に含まれるとする会社の主張を排して、残業代の請求を認めました。東京地方裁判所は、2008年3月21日、会社に対して、未払いの時間外労働の割増賃金約75万円の支払いを命じています。 深夜労働割増賃金と時間外労働割増賃金とで異なる判断となりましたが、それぞれ以下のような理由から結論付けられています。 深夜労働割増賃金について-基本給に含まれる・会社就業規則には基本給に深夜労働割増賃金が含まれている旨明記されている。 ・賃金台帳・給与明細において基本給の中の深夜労働割増賃金分の特定はなされていないが、使用者と労働者の間において、労働条件として、基本給いくら深夜割増賃金額いくらという形でその都度明らかにしなければ労働契約の内容とはならないということまではいえない。 ・廃棄物収集処理の勤務の大部分が夜から明け方にかけての作業で、必然的に深夜労働時間帯にわたるものであるから、本来的な深夜労働割増分を除いた基本給がおおよそいくらで、深夜労働した場合にそこからどれだけの割増賃金が加算されることになるのかは、ある程度給与明細の定額の基本給から逆算して推認できる。 ・昼間勤務の場合にも同じ基本給を支給していることについて、勤務時刻が必ずしも一定していない勤務実態と給与計算の手間との兼ね合いから便宜的に深夜割増賃金の過分な一律支給で運用していたとする会社の言い分もあながち不合理とまではいえない。 時間外労働割増賃金について-能力給に含まれない・時間外労働割増賃金を能力給に含めて支給する制度が実施されている。 ・給与条件は労働者の最も重要な労働条件の一つであり、労働者が日々の勤務した労働の対価として受け取るものであることからすると、自分の給与が月々の労働時間数や作業量との関係でいくらになるのかを労働者自身が概括的にでも自覚・理解できる程度に明確かつ一義的なものでなければならない。 ・月給制の場合なら月々の給与明細等と賃金に関する規定とを照合してみて、当月の労働時間数、そのうちの時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間との関係で労働者の賃金がいくらになるのかを労働者自身が概算でも分かる程度に明示されていることが求められる。 ・会社の就業規則や賃金規程のみからは、能力給の中で時間外割増賃金分がいくら含まれるのかが明示されていないことは明らかである。 なお、付加金については、給与体系自体が一見して明白に不合理・理不尽であるとか会社が法に反して積極的に残業代等を支払わないような対応を示している状況にはないとして、認められませんでした。
残業代請求が認められた事例 |