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Sカラオケ会社事件

会社に対して支払いが命じられた残業代の額:3399664

会社に対して支払いが命じられた付加金の額:3399664

カラオケボックスの店長であった方が、カラオケ、ビリヤード、ゲームセンター、麻雀店などの娯楽遊技施設を経営する会社に対して、未払い賃金の支払いを請求した事案です。元店長は、残業代(時間外・深夜割増手当)約340万円のほか、同額の付加金、基本給の未払い部分3万円及び社宅退去後に控除された社宅費や火災保険料等の不当利得約85千円を請求しましたが、大阪地方裁判所は、2009612日、元店長の請求を満額認める判決を出しました。

基本給の未払い分については、会社の行った基本給減額の効力、残業代については、時間外・深夜労働の有無、店長の管理監督者該当性などが裁判における主な争点となりましたが、裁判所は全ての点で元店長の主張を認めたのです。以下に、これらの争点に関する裁判所の判断理由をまとめておりますが、特に管理監督者該当性に関する争点について事実関係の詳細な検討がなされています。

基本給減額の効力-無効

雇用契約上の賃金額は、基本給月額20万円、原告が店長に就任した後は、基本給月額20万円に加えて店長手当月額3万円と売上歩合給を支払う旨の合意があった。

会社が基本給減額の根拠とする賃金規程は、元店長が勤務していた店舗に備え付けられていたことが認められず、これに基づく賃金額の減額は認められない。

時間外・深夜労働時間-元店長の主張する労働時間を認定

元店長は、レジスタで打刻するPOSシステムに入力された出退勤時刻に基づいて時間外・深夜労働の時間を主張し、会社は、元店長が主張する残業時間中に休憩時間が含まれると主張する。以下の理由から店長主張の労働時間が認められる。

・店舗に同時に配置される従業員は最大でも3名であり、不正打刻をしていては店舗運営そのものが困難となるはずであるところ、そのような事象があった形跡はない。

・会社の作成した基本シフトにも休憩時間が考慮されている形跡はない。

・喫煙や食事の時間があったとしても、客の来店や飲食物の注文があれば直ちに応答するために備えた手待ち時間であった。

 ・休憩時間が打刻されている日もあり適切に打刻していたことがうかがわれる。

店長の管理監督者該当性-否定

労働基準法上の管理監督者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、そもそも労働時間の管理になじまない者」のことである。

①経営的事項への関与-相当程度限定的

元店長は、店舗における唯一の正社員として、店舗における金銭管理、在庫の仕入れ及び管理、顧客管理等の責任者の地位にあり、店舗の営業が赤字になっているかどうか、店舗の売上と人件費等の経費の支出状況を把握もしていた。

しかしながら、店舗の主要な経費として想定される賃料は、本社で管理しており、人件費についても、営業時間の裁量がほとんどない上、シフトの最終的な決定権は本社側にあり、人件費の比率を制御しながら最大利益の獲得を図るようなことは困難であった。

仕入れについても、メニューの決定権が会社にある状況では、原価率の調整には大きな制約がある。備品の購入については、本社が決裁を行っている。

結局、店舗の利益を上げるために店長がなし得ることとしては、清掃の徹底やアルバイト従業員らの接客態度の指導等により再度の来店を期待するといった相当程度に限定的な事項に限られていた。

会社は、エリア会議や全国営業会議への参加を以て経営的事項への関与を主張するが、これら会議は経営方針の伝達の場として機能していた可能性はあるものの、元店長の経営ヘの参加の要素を見出すことはできない。

そもそも、150名から170名程度いる正社員として店長職にある者らが皆、全社的な経営に関する事項に関与していたとは容易に想定できない。

②労務管理への関与-限定的

店長は、店舗における唯一の正社員として、他のアルバイト従業員に対し、使用者側の者として具体的な指揮命令を行う立場にあった。また、アルバイト従業員の人事権、すなわち人員募集の要否の判断権、人員募集広告の掲出、求人計画の策定権、応募者の採用面接の実施権、採否の決定権、シフトの作成権、教育権、昇給の上申権を有していた。さらに、自身やアルバイト従業員のシフト表を作成しており、従業員の働き方について一定の権限も有していた。

しかしながら、求人や採用に関する権限については、採用しただけで直ちに労働させることになるものではなく、シフトに組み入れて初めて実際に労働させることになるところ、シフト表の作成は原則として会社の基本シフトに則ることが求められ、作成したシフト表は本社の決裁を受ける必要があった。結局、誰をシフトに組み入れるかについての裁量があったに留まる。

時給の決定についても、地域の同種店舗の状況や募集状態等各店長が把握している状況に左右されたり、店長が把握している人物的評価や働きぶりに左右される要素はあったにせよ、最終的な決裁は被告の本社で行っていた。店長は、時給増額の意見上申を行う範囲に留まると言わざるを得ない。

店長自身の労務管理についても、社員就業規則や基本シフトによって、来店客の多い金曜日や週末の勤務が原則として固定され、その効力に問題はあるにせよ、罰金制による強い強制の下で月間の所定労働時間が210時間と定められていた。

③待遇について-管理監督者に相応しい処遇か疑問

 

実際の月例賃金支給額が最も高額であった月の賃金額413500円を、労働基準法に基づく適法な割増賃金を含むものとして時給額へ単純に換算すると、1268円となる。

最高の月例賃金支給額413500円を12倍すると、4962000円となり、最も好調だったときを前提としても年収は500万円程度である。(もっとも、賞与が加われば、さらに増加する可能性はある。)

売上手当が支給額において少なくない割合を占めていた月もある。しかし、最高の売上手当が支給された月についても、売上手当を除いた支給額23万円を時給換算すると832円、売上手当月額113400円を含めた場合の時給換算でも1241円である。

店長に対し会社が支払っていた賃金は、正社員とアルバイト従業員の処遇の差としても説明可能な範囲である。

 

以上の検討によれば、店長について、経営者との一体的立場や労働時間の管理になじまないといった事情は認められないから、店長が管理監督者であることを認めるに足りる証拠はない。

 

もとより、会社の主張するところによれば、正社員のほとんどが経営的事項に関わり、経営者と一体的な立場にあって労働時間の管理になじまないということになるが、採用するには困難がある。

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